国税局(マルサ)と税務署の調査はどう違う?強制調査と任意調査の決定的な差
税理士 高橋 英明
マルサが入った、税務署の税務調査が来た、など、ニュースやネットで見かけることがありますが、国税局(マルサ)と税務署の調査はまったく性質が異なります。
多くの個人事業主や会社が経験するのは、税務署による任意調査(通常の税務調査)です。
一方でマルサと呼ばれる調査は、脱税事件などを対象にした強制調査であり、一般的な税務調査とは別物です。
この記事では、国税局(マルサ)と税務署の調査の違い、強制調査と任意調査の決定的な差、そしてそれぞれの調査の特徴をわかりやすく解説します。
目次
国税局(マルサ)とは?査察部による強制調査
マルサとは、正式には国税局査察部(査察官)のことを指します。
ニュースでよく聞く脱税摘発は、この査察部が担当しています。
査察は通常の税務調査とは異なり、刑事事件としての脱税捜査です。
マルサの主な目的
マルサの調査は、単なる申告ミスの確認ではなく、悪質な脱税を摘発することが目的です。
例えば次のようなケースが対象になります。
- ・多額の売上除外
- ・組織的な脱税
- ・巨額の所得隠し
- ・海外口座を利用した脱税
つまり、マルサが動くのは、意図的かつ悪質な脱税が疑われる場合です。
マルサが来る、というのは、刑事事件レベルの脱税があるということです。
税務署の税務調査は任意調査
一方、一般的な税務調査は税務署の調査官が担当します。
これは税法に基づく調査ですが、刑事事件ではなく行政手続きです。
任意調査の特徴
税務署の税務調査には次の特徴があります。
| 項目 | 税務署の税務調査 |
|---|---|
| 調査の種類 | 任意調査 |
| 主な目的 | 申告内容の確認 |
| 事前通知 | 原則あり |
| 対象 | 個人事業主・法人 |
任意調査という名称ですが、納税者には調査への受忍義務(調査を受ける義務)があるため、完全に拒否することはできません。
ただし、刑事事件ではないため、マルサのような強制捜査とは性質が大きく異なります。
任意と言っても、拒否できません。
でも、刑事事件じゃないんです。
強制調査と任意調査の決定的な違い
国税局(マルサ)と税務署の調査は、調査権限や手続きに大きな違いがあります。
以下の表で比較するとわかりやすいでしょう。
| 項目 | 国税局(マルサ) | 税務署 |
|---|---|---|
| 調査種類 | 強制調査 | 任意調査 |
| 法的性質 | 刑事事件 | 行政調査 |
| 事前通知 | なし | 原則あり |
| 捜索権 | あり | なし |
| 差押え | 可能 | 原則なし |
| 対象 | 悪質脱税 | 一般納税者 |
このように、マルサの調査は刑事事件の捜査に近い強力な権限を持っています。
マルサは、令状を持って突然来ます。
税務署の調査とは、レベルが違います。
マルサの調査はどのように行われる?
マルサの調査は、テレビやニュースで見かけるような強制捜査に近い形で行われます。
① いきなり捜索が行われる
マルサの強制調査では、裁判所の令状に基づき、事前通知なしで捜索が行われます。
突然多数の査察官が訪れ、次のようなものを調べます。
- ・帳簿
- ・パソコン
- ・金庫
- ・通帳
- ・現金
証拠隠滅を防ぐため、同時に複数の場所が捜索されることもあります。
朝、突然、大勢で押しかけてくる。
これが、マルサの強制調査です。
② 証拠資料が押収される
強制調査では、脱税の証拠となる資料が押収(差し押さえ)されます。
押収対象の例は次の通りです。
- ・会計帳簿
- ・パソコンデータ
- ・USB
- ・メモ書き
これらの証拠をもとに、最終的に刑事告発(検察への送致)が行われることがあります。
パソコンも、USBも、全部持っていかれます。
証拠を押収されるんです。
税務署の税務調査の流れ
一般的な税務調査は、次のような流れで行われます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 事前通知 | 電話などで連絡 |
| 日程調整 | 調査日を決定 |
| 調査当日 | 帳簿や資料の確認 |
| 指摘事項 | 修正申告の検討 |
税務調査では、売上や経費、銀行口座の動きなどが確認されます。
多くの場合、1日〜2日程度の訪問調査で終了するケースが一般的です。
普通の税務調査は、事前に連絡が来ます。
日程も調整できます。
マルサとは、全然違います。
一般の会社や個人にマルサは来るのか?
結論から言うと、一般の個人事業主や中小企業にマルサが入るケースは非常に稀です。
マルサが対象にするのは、次のようなケースです。
- ・巨額の脱税
- ・長期間の所得隠し
- ・組織的な脱税スキーム
ニュースになる脱税事件の多くは、数億円以上の所得隠しなどが関係しています。
そのため、通常の事業者が経験する税務調査は、ほとんどが税務署の任意調査です。
数千万円、数億円の脱税。
こういうレベルじゃないと、マルサは来ません。
任意調査でも追徴課税は発生する
税務署の調査は刑事事件ではありませんが、問題が見つかった場合は追徴課税が発生します。
代表的な税金は次の通りです。
| 税金 | 内容 |
|---|---|
| 過少申告加算税 | 申告漏れ |
| 無申告加算税 | 申告していない |
| 重加算税 | 悪質な隠ぺい |
特に重加算税が課される場合、税額の35〜40%程度のペナルティが発生することもあります。
マルサじゃなくても、追徴課税はあります。
普通の税務調査でも、ちゃんと税金は取られます。
よくある質問(FAQ)
Q. マルサと税務署は同じ組織ですか?
どちらも国税庁の組織ですが、役割が異なります。
税務署は通常の税務調査を担当し、国税局査察部(マルサ)は脱税事件の捜査を担当します。
Q. 税務調査が来ると逮捕されますか?
通常の税務調査で逮捕されることはありません。
刑事事件になるのは、マルサが関与するような悪質な脱税の場合です。
Q. 税務調査と査察は同時に来ることがありますか?
一般的にはありません。
税務署の調査とは別に、脱税の疑いが強い場合に査察調査が行われます。
まとめ|マルサと税務調査はまったく別の調査
国税局(マルサ)と税務署の調査は、目的も権限も大きく異なります。
大きな違いは次の通りです。
- ・マルサ:強制調査(刑事事件)
- ・税務署:任意調査(行政調査)
一般の個人事業主や会社が経験するのは、ほとんどの場合、税務署の税務調査です。
税務調査は正しく対応すれば過度に恐れる必要はありませんが、申告内容に不安がある場合は、税務調査に詳しい税理士へ早めに相談することが重要です。


