相続税調査の的中率は8割?申告から何年後に来るか、狙われやすい資産状況を解説
税理士 高橋 英明
相続税の税務調査は8割が申告漏れになると聞いて、不安になった方も多いのではないでしょうか。
実際、相続税の税務調査は他の税目に比べて指摘割合が高い傾向があります。
なぜそれほど的中率が高いのか。そして、申告から何年後に調査が来るのか。
本記事では、相続税調査の実態と、狙われやすい資産状況、そして今からできる対策を解説します。
目次
相続税調査の的中率は本当に8割?
相続税の税務調査は、一般的に申告漏れなどの非違割合が高いと言われています。
これは8割すべてが悪質という意味ではありません。
実際には、以下のような比較的軽微な修正も含まれます。
- 名義預金の認定
- 財産評価の修正
- 計算誤り
相続税は財産評価や資産把握が複雑であるため、指摘事項が生じやすい税目なのです。
他の税目だと、売上や経費の話。でも相続税は、そもそも何が財産なのか、どう評価するのか、という判断が難しい。だから、プロが関わっても指摘されることがあるんです。
相続税の税務調査は何年後に来る?
調査が入りやすい時期
相続税の申告期限は、相続開始から10か月以内です。
税務調査は、申告から1〜2年後に実施されるケースが多いとされています。
理由は以下です。
- 税務署が申告内容を精査する時間
- 資料分析や情報照合の期間
が必要だからです。
ただし、ケースによっては3年目以降に調査が入ることもあります。
申告して1年経ったから大丈夫、と思った頃に突然電話が来る。これ、よくあるパターンです。
相続税は何年さかのぼって調べられる?
原則として、税務署が更正できる期間は5年です。
しかし、仮装や隠蔽があると判断された場合は、最大7年遡りで調査されます。
つまり、申告後数年間は安心できるとは限りません。
5年経ったから安全、というわけじゃない。悪質と判断されれば7年。この2年の差は大きいです。
相続税調査で狙われやすい資産状況
相続税調査では、特に次のような財産が重点的に確認されます。
① 名義預金
最も指摘が多い項目です。
- 子や孫名義の預金
- 長年積み立てられている口座
- 通帳や印鑑を被相続人が管理していたケース
形式上は家族名義でも、実質的に被相続人の財産と判断されると、相続財産に加算されます。
子供名義の口座だから大丈夫、と思っていたら、実はお父さんが管理していた。これ、アウトです。名義じゃなく、実質で判断されます。
② 現金・タンス預金
金融機関の履歴と照合し、不自然な引き出しがある場合は確認されます。
申告書に記載がない現金が発覚すれば、申告漏れとみなされます。
亡くなる前に1000万円引き出されている。でも申告書には現金の記載がない。じゃあこのお金、どこに行ったんですか、と聞かれます。
③ 生前贈与の重要改正:3年以内から7年以内へ延長
相続税の計算には、亡くなる直前に行われた贈与を相続財産に書き戻して計算するルール(生前贈与加算)があります。
これまでは死亡前3年以内が対象でしたが、令和5年度の税制改正により、2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から、この期間が段階的に7年へと延長されることになりました。
- 改正前:死亡前3年以内の贈与を合算
- 改正後:死亡前7年以内の贈与を合算(2024年以降の贈与が対象)
この改正により、過去にさかのぼってチェックされる期間が大幅に長くなりました。
数年前の贈与だから大丈夫という思い込みが、税務調査での思わぬ指摘に繋がるリスクが高まっています。
5年前に子供に1000万円渡した。3年ルールだから大丈夫と思っていたら、7年ルールに変わっていて、結局相続財産に含まれることになった。こういうケースが増えます。
④ 不動産の評価
相続税評価額は、路線価や固定資産税評価額に基づき算出されます。
以下の誤りがあると修正対象になります。
- 土地の利用区分
- 賃貸割合
- 小規模宅地の特例適用
不動産評価は専門的な知識が必要です。自己判断で特例を適用して、後で否認される。これもよくあります。
⑤ 海外資産
国外口座や海外不動産も調査対象です。
国際的な情報交換制度により、海外資産の把握も進んでいます。
海外の口座だからバレない、という時代は終わりました。情報交換制度で、筒抜けです。
なぜ相続税は調査されやすいのか?
相続税は、以下のような特徴があります。
- 一度きりの課税
- 高額になりやすい
- 財産隠しが起こりやすい
さらに、金融機関や法務局などの情報が税務署に集まるため、申告内容との不一致が見つかりやすいのです。
税務署は、あなたが申告する前から、ある程度の情報を持っています。銀行からの情報、不動産の登記情報。それらと申告内容を照合するんです。
相続税調査で見られるポイント
調査では、次のような資料が確認されます。
- 過去数年分の預金取引履歴
- 不動産登記情報
- 保険契約情報
- 有価証券取引履歴
特に、被相続人の死亡前の資金移動は重点的にチェックされます。
亡くなる1年前から、預金の動きを全部チェックされます。大きな引き出しがあれば、これは何ですか、と必ず聞かれます。
調査リスクを下げるためにできること
① 財産を正確に把握する
名義だけでなく、実質的な管理状況を確認します。
誰が通帳を持っているか、誰が印鑑を持っているか。これが重要です。
② 預金履歴を確認しておく
大きな引き出しや移動の理由を説明できるようにしておきます。
100万円引き出した理由。ちゃんと説明できるようにしておいてください。
③ 不動産評価を慎重に行う
特例適用の要件確認は特に重要です。
小規模宅地の特例、適用要件を満たしていますか?自己判断は危険です。
④ 専門家へ相談する
相続税は判断が難しい税目です。
事前に専門家の確認を受けることで、調査リスクを抑えられます。
相続税は、素人判断が一番危険。必ず専門家に相談してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 相続税の調査は必ず来ますか?
すべての案件に入るわけではありませんが、一定割合で実施されています。
Q. 無申告だとどうなりますか?
無申告加算税や重加算税の対象になる可能性があります。
Q. 少額でも調査されますか?
財産構成や内容によっては対象になります。
まとめ|相続税は正確性がすべて
相続税の税務調査は、他の税目に比べて指摘割合が高い傾向があります。
特に注意が必要なのは以下です。
- 名義預金
- 不動産評価
- 生前贈与
しかし、適切に財産を把握し、正確に申告していれば、過度に恐れる必要はありません。
相続税申告に不安がある場合は、早めに専門家へ相談することが、将来のリスクを減らす最善策です。
相続税の8割が指摘される、というのは確かに高い数字です。
でも、それは悪質な脱税が8割という意味じゃない。名義預金の認定とか、評価のズレとか、そういう細かい修正も含まれています。
大事なのは、正確に申告すること。わからないことは、専門家に聞くこと。
自己判断で適当に申告して、後で指摘されて追徴課税。これが一番もったいない。
相続税は、最初からプロに任せた方が、結果的に安くつきます。
不安があるなら、今すぐ相談してください。申告してから後悔しても、遅いんです。